〽わたしが読んでた「中一時代」、今あなたの「中一時代」
 3月にこんなCMが流れていたのを覚えている人はもう少ないだろう。山口百恵が歌っていた。旺文社の参考書のCMにも出ていたので、旺文社が出している月刊誌『中一時代』は山口百恵が起用されたのだろう。年間予約すると特製ボールペンだったか万年筆だったかがもらえた。調べてみると河合奈保子がCMに出ていたときは「六年生の皆さん、いま旺文社の中一時代を予約すると素敵なカメラをもらえちゃうの!」とシーソーに乗って上下しながら言っている。さぞしゃべりにくかったことだろう。岡田有希子のセリフは「中一時代を年間予約すると、その場でラジオ付きカメラをあげちゃいます!」だ。その頃の小学六年生の目にはラジオ付きカメラが魅力的に映ったのだろうか。
 『中一時代』としのぎを削っていたのが『中一コース』だ。こちらは学研が出していた。山口百恵に対してこちらは桜田淳子だった。自分はどっちを読んでいたのかよくわからない。
 最近読んだ手塚治虫の『アリと巨人』は1961年4月2026.08.15アリと巨人から翌年の11月まで中一コース・中二コースに連載されていたという。あまり知られていない作品のように思う。その頃に中一だった人は昭和23年生まれで今78歳だ。
 昭和14年に父親が出征する場面から始まる。戦争で親を失ったマサヤンと同じくみなしごのムギヤンは親友だったがそれぞれ別の道を歩んでいく。昭和34年に大人になった二人それぞれ全く違う生き方をし、対決を余儀なくされる。毎回クスノキと動物たちが会話するディズニー映画のような場面が出てくる一方、下山事件や浅沼稲次郎暗殺事件を思い起こさせる出来事を絡ませ、社会の裏にうごめく存在も描く。当時の中一生はどう受け取っていただろうか。
 あとがきでは「物語の暗さもあって、しばらくは単行本化されず、S出版から一度出しましたが、、あまり評判にもならなかった、地味な作品です」とある。また、「学研さんは、好きなものを、好きなように書かせてくれるので好きです。」と書いているのが手塚治虫らしいところだ。
 メディアが少なかった時代には暇なときにもう読んだコミックや雑誌を繰り返し読んだりしたものだ。この作品を最後まで読んで、人間のちっぽけな存在だとか愚かさ、前を向いて一つ一つがんばっていくことの大切さを感じていた少年少女もいたに違いない。きっともう忘れているだろうけれど。

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 第428号 手塚治虫の『ネオ・ファウスト』 の巻
 2026年03月28日
 第422号 手塚治虫の『ファウスト』 の巻 
 2026年03月04日
 第343号 『アポロの歌』 の巻 
 2025年02月16日

『アリと巨人』 手塚治虫著 手塚治虫漫画全集72 講談社
一九七九年八月  三十  日 第一刷発行 定価:本体583円(税別)
二〇〇二年六月二十八日 第八刷発行

昭和36年4月号~37年3月号  中学一年コース
昭和37年4月号~11月号     中学二年コース 連載