ブロンズ新社の「にんげんの物語」「子供から大人まで楽しく読める21世紀の伝記シリーズ」シリーズはなかなかおもしろいと思って読んだ三冊目は『ヒミカ』だ。卑弥呼のことだが、一般的にはヒミコと読む。なにゆえヒミカとしたのか。
書き手は中山千夏だ。作家、歌手、女優、司会者、テレビタレント、声優、参議院議員などマルチに活動していたが、今はどうしているのだろう。日本の記録が残っていない時代にリーダーだった卑弥呼をどんな視点で書くのか興味があった。前半はイザナミ・イザナキから始まる神話が綴られる。聞いたことのあるストーリーがファンタジーのように続く。が、海の上に産んだという島が一般的に知られるのとはちょっとちがうようだ。
日本の神の名は言いにくい。「アマテルは、前にヒルコが決めごとでうんだ、マサカツアカツカチハヒアマノオシホミミを呼んで、こう言った。」カタカナ19文字だ。その半分近くがa音だ。今日本語で「昨日はあたたかかった。」と言うとき、「あたたかかった」は外国人には言いにくいだろうなと関係ないことを想像した。
さて、ヒミカが魏に使いを送るあたりは朝鮮半島の勢力関係が説明され、その動きから日本の動きを説明しているので「日本の歴史」という視点で見ている子どもたちには新鮮かもしれない。ヒミカが死んでからの倭の五王やタリシホコ、日本書紀の成立までざっと書いて終わる。
「おまけ」というページがあってそこで著者は「今、古代の歴史を考える時、信用できる学者の第一番は、考古学では森浩一さん、そして古代史では古田武彦さんだ、と私は思っています。」「古田武彦さんの説に、てっていしてしたがいました。(ママ)」と書いている。『「邪馬台国」はなかった』で知られる古田武彦氏の説にしたがい、教科書とは違う卑弥呼の前、そして後の歴史を描いたというわけだ。そして「テストの時は、先生が教えたとおりにこたえておくほうがいいかもしれません。でも、本当はちょっとちがう、と思っていてほしいのです。」と付け加えている。
古代史については自分の意見を持つほど知らない。そもそも魏志倭人伝に記されているのが「邪馬壹国」となっているのも今回この本を読んでから色々調べて初めて知ったくらいだ。「壹」(壱・一)と「臺」(台)の違い論争も、「書き間違いはある、いやない」でよくわからない。卑弥呼の読みも「ヒミコ」なのか「ヒミカ」なのかよくわからない。ちなみに現代中国語の発音は、「卑」は(bēi)、「弥」は(mí)、「呼」は(hū)だ。
よくわからないが、古代は今の国境と違って、北九州のあたりから朝鮮半島は大陸の影響も受け、大小さまざまな人々の集団が活発に動いていたと考えるほうが自然だとは思う。古代史の沼に入るとやばそうだが、変なフィルターはかけないでもの・ことを見たいものである。
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『ヒミカ卑弥呼――むかし倭国に女王がいた』 中山千夏著 ブロンズ新社
1987年11月25日 初版第一刷 定価1300円
挿絵 佳村萌

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