魯迅の子ども向けの伝記を読んで( 第458号 めざめて人はどこへ行くか の巻 )、「子供から大人まで楽しく読める21世紀の伝記シリーズ」のほかの本も読みたくなった。まず『ポルシェ 自動車を愛しすぎた男』を読んでみた。1987年の出版なので図書館で探した。Amazonではすごい値段で出ている。
 ポルシェといえばスポーツカーの名前として誰もが知っているし、もしお金がうなるほどあれば自分だって乗ってみたい。が、それを創り出した一人の人間をどれだけの人が知っているだろうか。いちばん速い車といちばん売れた車をつくった男。そう、フォルクスワーゲ2026.07.31ポルシェンをつくったのもポルシェだ。Volkswagenは日本語で国民車と訳すこともあるが、外来語としてフォルクスワーゲンと言っている。ちなみに中国語では大众汽车(Dà zhòng qì chē)と言っている(“大众”は大衆の簡体字)。
 書き手は『魯迅』と同じく「専門家」ではなく劇作家の斎藤憐で、いい味を出している。最初のあたりに出てくる、ポルシェの父親アントンとじゅうたん工場の親父とのやりとりは演劇のセリフのようだ。
 フェルディナント・ポルシェはまだ19世紀、明治維新の8年目に今のチェコで生まれたが、当時はオーストリア=ハンガリー帝国のボヘミア王国であり後にドイツ国籍を取ることになる。~~国人という意識はあまりなかったかもしれない。
 ブリキ職人のせがれで小学校しか出ていないポルシェは父親の言いつけで同じ村の工場に行って初めて電灯を見る。そんな彼が18歳でウィーンに行き、24歳の時に自動車を設計しパリ万国博覧会に出品しグランプリをおくられる。この時の車は電気自動車だったのはおもしろい。これから内燃機関がものすごい勢いで発達するわけだが、この本が書かれた頃は自動車の動力がまた電気に戻る流れが来るとは思わなかったろう。
 伝記のおもしろいのはその人の成長や苦悩を知るとともにその生きた時代の流れを知ることができることだ。なぜ産業革命がイギリスで起きたのか。第一次世界大戦が起きる状況、ドイツのヒトラーの台頭、そして第二次世界大戦。戦争後ポルシェは戦勝国の取り調べを受けた後にフランス秘密警察に拘束される。その裏にはプジョーがドイツ協力の罪を問われそうになりポルシェになすりつけた、フランスが国策でフォルクスワーゲンのような車をつくろうとしたのでポルシェを遠ざけ利益を守ろうとしたとされる。
 71歳でようやく釈放され、ポルシェ356が完成する。1951年ポルシェは75歳で亡くなり、その5か月後にル・マン24でポルシェ356が最高時速180Kmを出して優勝する。
 小中生の夏休みものこり二週間だが、この本を読んでほしい。

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 第458号 めざめて人はどこへ行くか の巻
 2026年07月19日



『ポルシェ 自動車を愛しすぎた男』 斎藤憐著 ブロンズ新社 
 1987年11月25日 初版第一刷  定価1300円  
  挿絵 広野徹