もうなくなってしまったのだが、自転車に関することなら様々なものを紹介する投稿サイトがあって、そこで紹介されていた漫画を読んだことがある( 第374号 競輪王ゼロ の巻 )。この『東京幻視行』もそのサイトで見かけたものだ。自転車関連のサイトを見てるなら漫画じゃなくてもっと実際に乗るものを試せよと言われそうだ。ちなみにこのサイトは「サイクルベース名無し」というのだが、現在は「cbnblog」となって「自転車に関する有益な情報や、楽しい情報・新しい価値観の発信」を目的として続いている。漫画の紹介のような、テーマからはずれたものがないのを残念に思うのは私だけだろうか。
 さて、この『東京幻視行』は谷川ジローの単行本未収録傑作短編集だ。ワイド版でカラーページもある。表題作品は中年の不倫の話、「夢2026.06.27東京幻視行のつづき」は旅の中のファンタジー、他は近未来のSFや西部劇などさまざまなジャンルの短編が並ぶ。「1997年の暗殺者」は関川夏央との共作だ。どれも谷口氏がひとつの作品のワールドを作っている。随筆もある。「サスケとジロー」という犬を飼う話だ。コアなファンならみな読みたいと思うかもしれない。
 最後に収録されている「ダッシュ!」が自転車ものだ。扉を入れて32ページの読み切りだが、「いいね」と昭和の人間がなんとなく口にしそうな短編だ。「あんたと目いっぱい走ったとき鳥肌が立ったよ」「まわりの風景がキラキラ耀いて見えたんだ」「あのとき俺は生まれて初めて奇妙な充実感ってやつを味わった……」「いま……自分の力だけで風を切るってことがどんなことなのかようやくわかりかけてきた」という台詞は口に出せば気障っぽいが、感じたことがある人が書ける台詞だと思ったら、あとがきに「私が高校時代にやっていた自転車競技を題材にした」とあった。これは初めて知った。
 この短編が掲載されたのは「エロトピア」といういわゆる成人漫画雑誌だ。1986年7月17日号とある。まだ学生だった夏、充実感ってヤツを味わっていたかなあ。

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 第454号 坊ちゃんの時代 の巻 
 2026年07月09日
 第438号 神々の山嶺 の巻 
 2026年05月01日 
 第374号 競輪王ゼロ の巻 
 2025年08月31日




『東京幻視行』[単行本未収録傑作短編集]  谷口ジロー著 講談社コミックス KCDX-1025
1999年1月22日 第1刷発行  定価:本体1143円(税別)
「東京幻視行」         ヤングシュート/劇画村塾  1989年10月号
「夢のつづき」                         自由時間/マガジンハウス  1995年1月1日・19日合併号
「サスケとジロー」       ワン/ペットハウス     199412
「THE BACK OF BEYOND」
  ARTICLE◆1 探偵日記    バイオレンス/壱番館書房      1986年1月号増刊
  ARTICLE◆2 オー二ソロジ  バイオレンス10/壱番館書房  1986年5月号増刊
  ARTICLE◆3 もぐり酒場   バイオレンス10/壱番館書房  1986年8月号増刊 
「1997年の暗殺者」        プレイコミック/秋田書店         1985年8月22日号
「白色地帯」#1        コミックモーニング/講談社      1984年4月5日号
「白色地帯」#2                             コミックモーニング/講談社      1984年4月19日号
「CHERGY」                                 バキーン/世界文化社                1986年3月20日号
「ダッシュ!」                                エロトピア/ワニマガジン者   1986年7月17日号