「教科書の闇」なら検定制度や採択に関わる、私たちには見えない闇を暴いているかとも思うが、「国語教科書の闇」である。となると国語の教科書を選ぶ教員の闇だろうか。
この本は2013年の出版で、なぜ国語の教科書は『羅生門』、『こころ』、『舞姫』という「定番」ばかりなのか、という内容である。
多くの人がひとつ思いつくのは、ぶっちゃけ教師が楽をしたいからということ。数学ならもうやることが決まっていてチョーク一本持って教室に行けばいい(毎回綿密に授業計画を練ってその都度対象生徒に合わせて例題を考えている人もいるでしょうけど)。が、国語は教材が変われば教案を考えなければならない。本来教材を教えるというより、文章や作品の読み方を教えるべきなのだが、小説となるとその作品や作者についての理解も伴うので、毎年扱う作品が変わってテスト問題もゼロからつくるのは容易ではない。ではない。
この本の中で著者は25人の現場の教師に聞いているが、「忙しいから定番教材が多い方が楽でよい」と語った人は誰もいなかった。むしろ、生徒は現代文は聞いていなくても何とかなる科目、つまり入試でもある程度点が取れる科目なので、いかに生徒の関心をひくか腐心しているという。
一方国語教師でなくてもこう考えるかもしれない。読書離れが進んでいる、というより本を読む方が少数である現在、日本人の大多数が読んでいる『羅生門』を高校時代に読まなかったら一生読まないかもしれない、と思うと寂しく感じる。やっぱり授業で扱うべきだと。
著者は、70年代から80年代にかけて学習指導要領で主題を重視する記述があり現在の定番教材が登場した。そして少子化が進んで行く中で教科書会社が採択されないことへの不安が生まれ大胆な変更はされにくくなったと分析している。
著者は、学習指導要領では「生徒の生きる力をはぐくむ」とあるがこれらの小説は暗いものばかりで、名作ではあっても「定番教材」としてふさわしいのかと疑問を呈している。確かに強盗や自殺、女性を捨てるような話ばかりだ。
おもしろかったのは高校時代に『舞姫』を読むことで鴎外嫌いになる学生がいるのではと大学の教授が感じているくだりだ。
2022年度から高校1年の国語はそれまで「国語総合」という科目を週に4コマやるのに変わって、「現代の国語」を2コマ、「言語文化」という科目を2コマか3コマやることに変わった。「現代の国語」には小説が入っておらず評論文や随筆だけである。小説は「言語文化」に含まれることになった。ご存知のように高校の古典は入学直後に四段活用やら完了の助動詞「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」だとか、未然形接続なんかをやらされて、それでいやになったという声も聞く。このほかに漢文の基礎もやらなければならないので一学期は余裕がない。それで2コマでもいいところを3コマやっているところも多いのだが、さらに小説もやるとなるともう時間が足りない。高校1年一学期の「定番教材」というと『羅生門』だが、今この小説をどのくらいの学校で扱っているのか興味がある。
教科書で読まなくても1人1人がいろんな作品を読むようになればいいわけだが、忙しさなの中であきらめずに生徒に本を取るようにと真剣に説く余裕もなく、教師も読書に割く時間もないのが現状だろうか。
※ コメントは表示されないようになっていますが、書いていただければ私の方には届きます。
『国語教科書の闇』 川島幸希(こうき)著 新潮新書534
2913年8月20日 発行 定価:本体680円(税別)
この本は2013年の出版で、なぜ国語の教科書は『羅生門』、『こころ』、『舞姫』という「定番」ばかりなのか、という内容である。

多くの人がひとつ思いつくのは、ぶっちゃけ教師が楽をしたいからということ。数学ならもうやることが決まっていてチョーク一本持って教室に行けばいい(毎回綿密に授業計画を練ってその都度対象生徒に合わせて例題を考えている人もいるでしょうけど)。が、国語は教材が変われば教案を考えなければならない。本来教材を教えるというより、文章や作品の読み方を教えるべきなのだが、小説となるとその作品や作者についての理解も伴うので、毎年扱う作品が変わってテスト問題もゼロからつくるのは容易ではない。ではない。
この本の中で著者は25人の現場の教師に聞いているが、「忙しいから定番教材が多い方が楽でよい」と語った人は誰もいなかった。むしろ、生徒は現代文は聞いていなくても何とかなる科目、つまり入試でもある程度点が取れる科目なので、いかに生徒の関心をひくか腐心しているという。
一方国語教師でなくてもこう考えるかもしれない。読書離れが進んでいる、というより本を読む方が少数である現在、日本人の大多数が読んでいる『羅生門』を高校時代に読まなかったら一生読まないかもしれない、と思うと寂しく感じる。やっぱり授業で扱うべきだと。
著者は、70年代から80年代にかけて学習指導要領で主題を重視する記述があり現在の定番教材が登場した。そして少子化が進んで行く中で教科書会社が採択されないことへの不安が生まれ大胆な変更はされにくくなったと分析している。
著者は、学習指導要領では「生徒の生きる力をはぐくむ」とあるがこれらの小説は暗いものばかりで、名作ではあっても「定番教材」としてふさわしいのかと疑問を呈している。確かに強盗や自殺、女性を捨てるような話ばかりだ。
おもしろかったのは高校時代に『舞姫』を読むことで鴎外嫌いになる学生がいるのではと大学の教授が感じているくだりだ。
2022年度から高校1年の国語はそれまで「国語総合」という科目を週に4コマやるのに変わって、「現代の国語」を2コマ、「言語文化」という科目を2コマか3コマやることに変わった。「現代の国語」には小説が入っておらず評論文や随筆だけである。小説は「言語文化」に含まれることになった。ご存知のように高校の古典は入学直後に四段活用やら完了の助動詞「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」だとか、未然形接続なんかをやらされて、それでいやになったという声も聞く。このほかに漢文の基礎もやらなければならないので一学期は余裕がない。それで2コマでもいいところを3コマやっているところも多いのだが、さらに小説もやるとなるともう時間が足りない。高校1年一学期の「定番教材」というと『羅生門』だが、今この小説をどのくらいの学校で扱っているのか興味がある。
教科書で読まなくても1人1人がいろんな作品を読むようになればいいわけだが、忙しさなの中であきらめずに生徒に本を取るようにと真剣に説く余裕もなく、教師も読書に割く時間もないのが現状だろうか。
※ コメントは表示されないようになっていますが、書いていただければ私の方には届きます。
『国語教科書の闇』 川島幸希(こうき)著 新潮新書534
2913年8月20日 発行 定価:本体680円(税別)

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