これはおもしろかった。読んでいるときのわくわく感は、子どもの頃に少年探偵団シリーズなんかを読んだときの気持ちに近いかもしれない。本棚に並んでいただけだったのは本当にもったいなかった。読んでよかった。今年も3分の1が過ぎてしまったが、「マイナス・ゼロ」は今のところ2026年自分のベストブックだ。ネタバレしないように魅力が伝えるには思いを伝えるしかない。
 2008年、本屋大賞の5周年特別企画「この文庫を復刊せよ!」で1位になって改訂新版になった時に買ったものなのだろう。って自分が買ったんじゃな2026.04.13マイナス・ゼロいか。新聞の書評欄で見て買った記憶がうっすらとある。書かれたのは1965年だが、全く古びていない。セリフにしても「せ、せんせえ……」という表記は当時は珍しかったのではないか。たばこのシーンが多いのに時代を感じるくらいだ。
 ストーリーはよく練られているし、社会背景や人々の様子も調べた上で描写されている。単行本化されたのが5年後の1970年で、文庫化された後も絶版状態が続いたというのも不思議だ。70年下半期の直木賞候補になり司馬遼太郎が強く推したが受賞しなかったという。この頃の直木賞はSFを題材にした作品は賞のイメージに合わないと考えていたのかもしれない。しっかり作品自体を認めた司馬遼太郎を評価したい。
 ストーリーもよくできているが、出てくる人たちがいいのだ。カシラ一家は胸がほんわかする。理由も詮索せずに一肌脱ぐ人たち。読んでいて幸せな気持ちだった。
 何とも惜しまれるのは作者の活動期間が短かったことだ。47歳で亡くなっている。映画化の話もあって脚本まで書かれたそうだが、昔の銀座のセットを作るのに予算がかかりすぎるというのでボツになったという。脚本は棺に納められたそうだ。今ならCGでうまくやれるんじゃないか。キャスティングはどうする。何だか大泉洋になってしまいそうな気がする。うーん、悪くないんだけど、ほかにいないかな。啓子さんも大事だ。カシラやおかみさん、隆君やオヤブンはだれがいい。読んだ後こんなふうに楽しめるのはいい小説だと思う。

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『マイナス・ゼロ』 広瀬正著 集英社文庫
1982年 2 月25日 第 1 刷      定価 本体762円+税
1998年11月15日 第12刷
2008年 7 月25日   改訂新版 第1刷

解説 星新一