新刊本と言っても2023年12月の出版だから、もう2年以上経っている。が、最近も新聞の広告欄で見た記憶がある。けっこう売れているのかもしれない。
綿矢りさの作品は『手のひらの京』を数年前に読んだだけだ。最年少で芥川賞を受賞して話題になったが、受賞作は読んでいない。今回気になっ
て調べたらもう42歳におなりだ。自分も歳をとるわけだ。
拙ブログはChinese,cycling,cello,coffee,curryの5つのCを中心に綴ろうと思っていたのだが、ほとんど関係のないものになっている。たまには中国ネタもいいかもしれない。
丸の内のランチで飛騨牛を頬張る女子会から始まる。まだ中国では“清零(ゼロコロナ政策)”が続いているころだ。夫の駐在している北京に行くことになった菖蒲(アヤメ)の送別会を兼ねて三人が集まったのだが、マウントの取り合いのような会話が私のようなものは読んでいて辛い。職業や収入の多寡にかかわらず、「中国なんて……」のような空気をともなう言葉を出す人はいるが、そういうものを吹っ飛ばすキャラクターとしてこの主人公を設定したのはおもしろい。飼っている犬を連れて行くのに検疫証明書を取るのも面倒に思わず、やりたいことはやるという行動派だ。
集英社の情報誌『青春と読書』(定価100円税込み)2023年12月号の巻頭インタビューで語っているところによると、「『すばる』で中華小説の特集に参加した時(二〇二三年六月号の「中華、今どんな感じ?」特集)、せっかく自分が北京にいるのだから、中国についての小説を書いて載せたほうが盛り上がるかな、みたいなことも考え」たとのことだ。主人公の菖蒲を「二十歳年上の夫のお金で遊びまくっていて、北京に来ても歴史や文化遺産にはまったく興味を示さず、ショッピングモールで買い物したがる女性」にしたのには、「(コロナの時期の)そういう状況もどこ吹く風で、広い北京を動き回る外向的な性格の人を主人公にしました。今の北京のどこが日本と違って、どこが似ているのかなどをミーハーな視点で書きたかった」と語っていてなるほどねと思った。春節に向かっていく時期の様子や中国と日本の文化の違いなども菖蒲の素直な視点で描かれていて中国のことを知らない人が読んでもイメージしやすいかもしれない。
読んでいるうちに、主人公の菖蒲の姿が日本にやってきて日本の生活を満喫している中国人たちと重なって見えてきた。
最後の方で魯迅の「阿Q正伝」が出てくる。魯迅の名を聞いて魯山人だと思う菖蒲に吹き出した。
久しぶりに「精神勝利法」のワードを見た。心のどこかに自覚があるなら、落ち込んだときなど精神衛生上メリットがないわけではない。が、無自覚な精神勝利法で自分が見えなくなっている人間が日本を含め地球のあちらこちらにうようよしているよなとちょっと空しくなった。
※ コメントは表示されないようになっていますが、書いていただければ私の方には届きます。
初出 「すばる」二〇二三年六月号
『パッキパキ北京』 綿矢りさ著 集英社
二〇二三年一二月一〇日 第一刷発行 定価 本体1450円+税
綿矢りさの作品は『手のひらの京』を数年前に読んだだけだ。最年少で芥川賞を受賞して話題になったが、受賞作は読んでいない。今回気になっ
て調べたらもう42歳におなりだ。自分も歳をとるわけだ。拙ブログはChinese,cycling,cello,coffee,curryの5つのCを中心に綴ろうと思っていたのだが、ほとんど関係のないものになっている。たまには中国ネタもいいかもしれない。
丸の内のランチで飛騨牛を頬張る女子会から始まる。まだ中国では“清零(ゼロコロナ政策)”が続いているころだ。夫の駐在している北京に行くことになった菖蒲(アヤメ)の送別会を兼ねて三人が集まったのだが、マウントの取り合いのような会話が私のようなものは読んでいて辛い。職業や収入の多寡にかかわらず、「中国なんて……」のような空気をともなう言葉を出す人はいるが、そういうものを吹っ飛ばすキャラクターとしてこの主人公を設定したのはおもしろい。飼っている犬を連れて行くのに検疫証明書を取るのも面倒に思わず、やりたいことはやるという行動派だ。
集英社の情報誌『青春と読書』(定価100円税込み)2023年12月号の巻頭インタビューで語っているところによると、「『すばる』で中華小説の特集に参加した時(二〇二三年六月号の「中華、今どんな感じ?」特集)、せっかく自分が北京にいるのだから、中国についての小説を書いて載せたほうが盛り上がるかな、みたいなことも考え」たとのことだ。主人公の菖蒲を「二十歳年上の夫のお金で遊びまくっていて、北京に来ても歴史や文化遺産にはまったく興味を示さず、ショッピングモールで買い物したがる女性」にしたのには、「(コロナの時期の)そういう状況もどこ吹く風で、広い北京を動き回る外向的な性格の人を主人公にしました。今の北京のどこが日本と違って、どこが似ているのかなどをミーハーな視点で書きたかった」と語っていてなるほどねと思った。春節に向かっていく時期の様子や中国と日本の文化の違いなども菖蒲の素直な視点で描かれていて中国のことを知らない人が読んでもイメージしやすいかもしれない。
読んでいるうちに、主人公の菖蒲の姿が日本にやってきて日本の生活を満喫している中国人たちと重なって見えてきた。
最後の方で魯迅の「阿Q正伝」が出てくる。魯迅の名を聞いて魯山人だと思う菖蒲に吹き出した。
久しぶりに「精神勝利法」のワードを見た。心のどこかに自覚があるなら、落ち込んだときなど精神衛生上メリットがないわけではない。が、無自覚な精神勝利法で自分が見えなくなっている人間が日本を含め地球のあちらこちらにうようよしているよなとちょっと空しくなった。
※ コメントは表示されないようになっていますが、書いていただければ私の方には届きます。
初出 「すばる」二〇二三年六月号
『パッキパキ北京』 綿矢りさ著 集英社
二〇二三年一二月一〇日 第一刷発行 定価 本体1450円+税


コメント