20年くらい前かと思うが、古本屋で『小さな農園主の日記』という新書を見つけ読んでみた。畑を借りて幾種類かの野菜を作っていたころのことだったかもしれない。読んでみてあまりおもしろくなかった。正直本当にただ誰かの日記を読んでいるようで、だからどうしたという感じがしたのだ。作者のことをよく知らなかったからかもしれない。
 ただ著者の玉村豊男の名前は記憶に残った。それから何年か経ってよく見ているサイトの中で氏の著作である『料理の四面体』という本中に絶賛さ2025.09.21料理の四面体れているのを目にした。早速手に入れて読み始めた。最初の著者がアルジェリアで食べた羊肉の煮込みのところからおもしろかったのだが、ちょっとしたことから放置したままになっていた。そして先頃また読み始めて読了したのだが、もっと早く読めばよかったと思った(2018年7月のマクドナルドのレシートがしおり代わりに挟まっていた)。
 フランス料理で「リソレ」だの「マリナード」だのといった言葉を聞くと知らなければ恐れをなしてしまうが、「ブイヨン」も原理で考えれば「出汁」ということだ。氏は前書きで「世界のあらゆる料理に共通する単純で明快な原理を指摘した」と書いている。最終的に料理を火と水と空気と油を頂点とする四面体で提示する。底面は水と空気と油の三角形でできた「生ものの世界」だ。その頂点が「火」である。世界の料理はこの四面体のどこかに位置づけて説明することができるというわけだ。
 そうすると、刺身はサラダ、ということになる。アルジェリアの羊肉シチューから最後の四面体を提示するところに入り、例題を解くように料理を四面体の中に位置づけてみせる。考えて筆を進めている。
 私が手にしたのは2010年に中公文庫から出版されたものだが、最初は1980年に今はない鎌倉書房という出版社から出されたものだという。しかも、最初に原稿を持ち込んだのは中央公論社で、その時はボツにしていたという。もう45年も前に出された本だ。
 料理を仕事にしている人、というか私たちはみな料理を作って食べて暮らしているわけで、この本はもっと読まれていいと思う。
 氏を知った頃、私が知らないだけですでにかなりの著作があった。最初に読んだ本は何かの連載を本にまとめたものなんだろう。書きたい、という意欲が漲っているころの著作をまず手にすべきだった。

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料理の四面体 (中公文庫)
玉村豊男
中央公論新社
2017-06-30


『料理の四面体』玉村 豊男著  中公文庫 た 33-22 
2010年2月25日 初版発行  ¥648+税
2016年7月15日 4刷発行