前号の続き。
 東京国立近代美術館で会館前から並び棟方志功展を見て常設展まで見たのでヘロヘロである。もう1時近い。お昼はどうする?神保町まで歩いてカレーを食べるとしよう。
 並ぶのは嫌なので並んでいた時のために次の候補も考えていたが、平日のせいかすぐに座れた。行った店は共栄堂さんである。HPでは「スマトラカレー共栄堂」とあるが、共栄堂でいいのだろう。三十数年ぶりである。その時は確か先生にごちそうしてもらった記憶がある。正直忘れていたのだが、出てきてカレーをかけながら思い出した。ということは使っている食器と提供の仕方がほとんど変わっていないということだろう。学生の時はちょっと高くて日常的に食べるものではなく、先生が「ここに行きますか」みたいな感じで行ったのだと思う。急に当時のなにかと厚顔な自分が思い出され、懐かしさより恥ずかしさ、あの頃は仕方がないさというような受け入れざるを得ない思いがじわーっと浸みてきた。2023.11.14共栄堂カレー
 注文したのはポークカレー。1100円。スープが先に出てくる。あまり時間が掛からずカレーが来る。画像のようにステンレスの容器、調べたら「グレイビーボート」というらしいが、にカレーを入れて提供される。この形式は食べ方を悩ませる。ちょっとずつライスにかけて食べるのでいいのかと思うのだ。自分の子どもの頃はこのようにカレーのルーとライスを分けて出させるのはちょっと高級感があった。偶然テレビで、一気にルーをかけるべしというのを見た気がしてその時もそのようにしたことが脳裏に蘇ってきた。何だかプルーストの小説のようになってきた。
 グレイビーボートはもともとイギリス産の食器で、カレーではなくローストビーフなどにかける「グレイビーソース」を入れる器として使われてたものだとのこと。本場のカレーを提供するところではスパイスの色移りがしないためステンレスの容器を使うのが定番だが、グレイビーボートは使わない。ひょっとしたら日本の一部だけかもしれない。
 さて、味は独特である。焦げたような、酸っぱいような、何かの香辛料の香り……。好き嫌いが分かれるかもしれない。しかし、独特なものはあとになってまた食べたくなるのだ。スマトラカレーというものがどういうものかわからないが、たとえオリジナルのものを探してもきっといろいろなものがあるに違いない。日本で親子丼を食べて、「これが『親子丼』です」と言い切るのは簡単ではない気がする。スマトラカレーを知らないが共栄堂のカレーということで舌の記憶になった。
 今のところ、インドネシアまでスマトラカレーを確認しに行くほどのエモーションはない。これが「ザ スマトラカレー」だというものを気軽に食べられるところがあったら教えて欲しい。 
 今回は名物の焼きりんごを食べられなかった。次はこれを注文しよう。

    第242号 カレーあんぎゃ エチオピア の巻
    2023年10月28日