杉浦日向子の『合葬』を読んだ。
 前から読んでみたかった作品だ。筑摩文庫から出ているが、漫画を文庫で読むのは味わえない気がする。コミック版だって通常発表される雑誌の大きさより小さい。小池書院版は値は張るがA5版なので楽しめる。
合葬
杉浦日向子
小池書院
2012-04-24


 舞台は幕末も幕末、「さてどうしようか」という状況になった若者と徳川に殉じようと彰義隊に入隊している若者と蘭学を学んでいて江戸に戻ってきていた若者が運命の歯車に巻き込まれるように散っていく。若者の「青さ」とともに何ともやるせない。慶応4年と言えば、正岡子規の生まれた翌年だ。この作品の青年(少年)たちはその後を生きていければ新しい時代で十分に違った生き方ができただろう。実にこの2か月後に明治になるのだ。歴史的な事柄を見るとき、「なぜこんな行動をしたのか」と訝しく思うことは多いが、その時、その時代を生きている人々はその時代の中で運命や宿命に束縛され、目に見えない何かに動かされてしまうものなのかもしれない。私たちもどれだけ「自分の思考」で動いているだろうか。「主体性」などと簡単に言うが幻影かもしれない。
 浮世絵っぽいのでキャラクターの造形が似て見えるところがあって最初は慣れるまで何度か頁をめくり返して見てしまった。時代考証は杉浦日向子だけにしっかりしている。こんなこともあったかもしれない、と思えるような作品だ。この作品は、1984年に第13回日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞しているのも納得で、漫画というものの表現力を感じる。杉浦日向子は46歳で2005年に亡くなっているのが残念である。
 で、またいつもの癖が出て、映像化作品を見てしまった。
合葬 [DVD]
井ノ脇 海
松竹
2016-03-02


  柳楽優弥も瀬戸康史もなかなかいい感じだ。オダギリジョーもなかなかはまっている。途中までは良かったのだが、終わってみたら残念な感じ。「おまえたち二人だけを死なせはしないぞ」は原作にないし、これではちょっと違う方向に行ってしまう。最後の場面は蛇足だな。もっと自然に作れば良かったのに。キャストも門脇麦以外はいいのでほんとに残念。