前回書いたカザルスのホワイトハウスでの演奏は1961年。ケネディ大統領に招待されてのことだった。
 それから更に10年後、71年にカザルスは国連で演奏をしている。カザルスは73年に96歳でなくなっているから、このとき94歳である。演奏の前のスピーチでは声を振り絞るように平和を訴える。
 最近、YouTubeでカラーの動画を見つけた。聞き入っている人の中には涙ぐんでいる人がいる。

 “Peace!”と叫ぶように語るカザルスの声はとても94歳とは思えない力強さであり気持ちがこもっている。動画の字幕はオランダ語だろうか。“Vrede”と訳されている。
 イスに座るまで周囲から手を添えられ、座ってからチェロを渡されて構えるまで、見ている方が心配するような老人らしさがあるが、演奏に入ると前奏から指揮をするように弓を動かし、演奏に入ると「音楽」を作っていく。技巧がどうこうではない。94歳が弾いているという奇跡だ。『鳥の歌』を弾き、平和を訴え、多くの人々に感動を与える。こんなに人々に訴えかける力を持った、影響力のある演奏家・音楽家は他にいるだろうか。
日本語字幕版はこちら。  
 今何ができるわけでもない、何かをやると言い切る自信もない自分だが、できる限り起きている事象に無関係でなく周囲の人たちの心に寄り添っていけたらと思う。